ネット動画のテレビ的自動再生について



今日目に飛び込んできた「テレビがネットより優れているトコロ」というエントリーを読んで、あんまりにも全く同じことを考えている人がいたことに、心の底から「うぉっ!」という声を発したくなりました。こんな事を言うと、お前は地獄のミサワか!と言われそうで恥ずかしいのですが、確かに僕もずっとそう思っておりまして、過去にこういうエントリーを書いたりしていました。

そろそろ動画は自動再生が流行ると思うんです
やっぱり「自動再生」はキーワードな気がする

2年くらい前からそんな風に思いながら、日々ネットをウォッチしておりましたが、なかなか思うようなWEBサービスは現れませんでした。自動再生は確かに来るはずなのにっ!と思いながらも、実はそれを実現させるには、結構高い壁があるようなので、改めて僕なりの考えをまとめてみたいと思います。

■実は動画の自動再生は今までに既にことごとく敗れていた

実は「動画の自動再生」をコンセプトにしたサービスはいくつもありました。しかしその多くが特に話題にもならずに散って行きました。それは単純に時期のせいもあったかもしれませんし、サービスとして何かが足りなかったのかもしれません。

Rimo.tv
darao.tv
Rimo.tvは、はてなが行っていたサービスで、YouTubeやニコニコ動画を次から次へ流していました。そのプレイリストはユーザーが作ったり、人気動画を特定のアルゴリズムで引っ張り出してきたりしていて、恐らくテレビ的自動再生のコンセプトに一番近いサイトだったように思います。唯一のボタンは早送り、巻き戻しで、つまらない動画を次へスキップすることと、もう一度見たい時に頭に戻ることだけができました。darao.tvもインターフェイスは違えど、ほぼ同じような内容のサービスでした。

そして先の「テレビがネットより優れているトコロ」で指摘のあったサイト「GyaO」でも、実はかつて自動再生のチャンネルを持っていました。テレビのように24時間の番組並びが、中の人によって編成されており、いつ点けても何かが流れていましたが、ほとんどニーズが無く、数字が稼げずに長続きはしませんでした。

僕はGyaOの敗因は決して自動再生にニーズが無かったわけではなく、

  • ・早送りボタン(つまらない動画を飛ばせるボタン)が無かったこと
  • ・コンテンツの内容のせい(ネットで点けっぱで何となく見たいのは映画やドラマなんだっけ?)


の2点だと個人的には思っています。

ニーズはある気がするものの、自動再生はこれまでに既にことごとく敗れていたのです。これはまず頭に置いておいて損はないと思います。

■そうは言っても自動再生が来そうなニオイは各所でしている

とは言いつつもテレビ的自動再生が捨てきれないのは、あのネットの巨人Googleを始め、なんとなくWEBにそれを感じさせる要素が散見できるのです。

YouTubeXL

これはYouTube動画をテレビで見せるために開発されたインターフェースで、限りなくテレビに近い簡易的なインターフェースとなっています。YouTubeもやはりテレビ的な何かを実現しようとしているわけです。

GoogleReaderPlay

これはGoogleReaderというRSSリーダーにぶっ込まれた内容から、動画や画像を抜き出して、テレビ的に連続再生させるという面白いサービス。今のところこのサービスの話は沸騰してませんが、動画ではないコンテンツも動画的に連続再生をさせるというコンセプトは、ネット動画のテレビ的自動再生としてかなり面白いコンセプトであると思います。

YouTube「As seen on」

こちらはある特定のブログに埋め込まれたYouTube動画を連続再生させるというもの。連続させるコンテンツを、掲載された媒体ごとに切り出す事によって、ハズレを少なくするという、プレイリスト作りの面で新しいアプローチだと思います。

新しいYouTubeのインターフェース

こちらも最近YouTubeが発表したベータ版のYouTube新デザインですが、こちらは明らかに動画が連続再生されやすくなるようなインターフェース設計になっています。

また以下は、動画サービスではありませんが、「ネット上で何かを垂れ流す」というニーズが大きくあるということを証明してくれる要素であると思います。
radiko
Turntable.fm

■自動再生がなんとなく欲しいとは思っても、いざ動画が流れてくるとなんか違う?

別に未来を待たなくても、現時点でYouTubeでは実にいろいろな動画を1クリックだけで見る事ができます。YouTubeでは「再生リスト」という機能があり、1回選べば長い時間そのまま見ていられるものが多数あります。けれど、これをそこまで活用している人を見た事はありません。

例)フラメンコの動画をガーッと見たければ、YouTubeで「フラメンコ」と検索する時に、オプションで「再生リスト」を選びます。あとは出てきた再生リストの中から好きなものを選べば、自動的にフラメンコ動画が流れ続けます。

こちらはインドネシアの民族音楽を僕がリスト化したプレイヤーで、一度プレイボタンを押せば1時間ほど動画が流れ続けます。まるでテレビのようです。見ている動画が気に入らなければ次へ飛ばす事もできます。

もしそこまでニーズがあるならば、この自動再生機能はなぜ使われないのでしょうか。

一つは既に最初に検索しなければならないという点で能動的であり、テレビの圧倒的受動性とはやはり異なるという事があると思います。

しかしそれに加えて僕は、何かが決定的に違う気がしてならないのです。それがテレビとネット動画が決定的に違う何かだと思っています。

■テレビにあってネットに無いもの

ここからは少し私の感覚的な主観が入ってきます。実は僕も昔、実験的にテレビを2年ほど断食していたことがありました。どっぷりネットに浸かってやろうと。そうしてテレビを無くしてから1年くらい経った後に僕が猛烈に見たくなったのが

CMとニュースでした。

ネットはすべてがオンデマンドです。ネットで浴びるように動画を見ていて、もちろんテレビ動画も違法にアップされたりしていました。でも圧倒的に…

「今感」と「人感」

が無くなってくるんです。今という感じと、そこに人がいるんだという感じ。これが全く無くなってきます。僕自身でも意外だったのは、テレビはあの箱から、全国の人とつながってる感をもたらしてくれていたことに、無くなってから気づいたことです。そしてつながってる感を醸成していたものは、(少なくとも僕にとっては)CMとニュースだったんです。エンタメは無くなってもすぐには困らないけれど、ニュースを知りたいというのは、根源的な欲求だというのもあるかもしれません。

ちなみに、テレビ断食をしていた時に、僕はこんな事を感じていました。
家にテレビのないネットオタクの戯れ言

■「人感」と「今感」を出さないと、受動的視聴は長続きしない気がする

オンデマンドの動画を並べただけの「再生リスト」でも、僕は、動画と動画の間に「さて、次の動画は本日のニュースです」というナレーションが入るだけでも全然違ったものになるような気がしています。それほど「人がいる感じを出す」ことは、受動的視聴には必要な気がします。

そしてもしテレビ的なサービスをネットで実現させようとするならば、恐らくそのコンテンツは、まず「ニュース」で始めるべきだと思います。ニュースは人間の根源的な欲求であり、現時点のネットの使われ方から思うに、垂れ流しながらもまず見聞きしたいものは、ニュースが一番いいような気がします。高い壁を越えて、ネットで受動的視聴の土壌を作るならば、まず「ニュース的なコンテンツ」だと思います。

そういう訳で、「今感」を感じさせるニュースと、「人感」を感じさせる演出が必要なんじゃないかと思っています。

■今一番ネット動画のテレビ的自動再生で成功しているのは多分「ニコ生クルーズ」

ニコニコ動画のユーザー生放送を、ランダムに20秒ずつ流しながら回り続ける「ニコ生クルーズ」は、今ネットで最も成功しているテレビ的サービスだと思います。24時間で累計(のべなのかな?)100万人以上が毎日視聴しています。

先ほどから、ネットの動画を見ていても「人感」が無いと言ってきましたが、USTREAMニコニコ生放送などの「生放送サービス」の出現は、元々ネットが得意だった「コミュニケーション」を映像と同等のコンテンツとして提供してくれました。そのお陰で、映像に圧倒的な「人感」を加えてくれたように思います。

ニコ生クルーズのコンテンツは「ニュース」ではなく、「コミュニケーション」ですが、もしテレビ的なサービスができるとすれば、それはオンデマンドビデオを連続的に見せるアプローチではなく、生放送的なアプローチがいいのかもしれません。

■ちなみにテレビ的自動再生サービスの現時点での限界値

なんやらかんやら言っても、完全なるテレビコンテンツが震災時にUSTREAMで実現されました。NHK、それに民法キー局のほぼ全てのニュース番組がUSTREAMで見る事ができていました。その際の1日のユニークユーザーは133万人だったそうです。これが多い数字と見るか、少ない数字と見るかは分かりませんが、現時点でネットでテレビ的なサービスを行おうとした時の、恐らく最大値なのではないかと思います。

もちろん、ネット動画のテレビ的自動再生市場が成熟して行けば、この数はどんどん大きくなると思いますが、今のところはそんな感じの規模のようです。

という訳で、大変長くなりましたが、今の時点で僕が考えているネット動画のテレビ的自動再生について、全部書ききりました。

もしご意見などあればコメントとかtwitterとか残していただければ、またさらに研究してきたいと思います。

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